## 名の変更許可 ##

戸籍上の名は家庭裁判所の許可を得れば変更することができます。
「長年通用している名前がある」,「同姓同名の人が事件を起こして社会生活上不都合が生じている」,「宗教家が出家する」などが変更が許可される条件となります。
人の名前がコロコロ変わっては社会が混乱しますのでしっかりとした理由が求められます。
ちなみに私が関わったものとしては,とある理由から幼いころからずっと戸籍とは別の名前を使い続けていた少女について,名の変更を許可してもらったことがあります。
(2014.5.2)

## および,並びに ##


法律の条文は厳密なルールに基づいて作られています。

AおよびB並びにC
A,BおよびC
A,B並びにC

の最初の2つは意味が違うし,3つめは誤りとされます。
違いを解説するとこんな感じでしょうか。

(AとB)とC   
AとBとC    
「およびに」を使わない文章で「並びに」を使ってはいけない。

「または」,「若しくは」,についても同じようなルールがあります。
普段はそこまで意識することのない使い分けでうっかりすることもあるのですが法律を読む基本だったりします。
このルールを上手に使うことで1つの条文に短くたくさんの内容を盛り込めるようになります。
ただ,やりすぎると読み解くのが困難になってしまうことも多く,解読作業がパズルを解くようになるものもあります。
バラバラに5つくらいの条文に分けて欲しいなと思ったりします。
(2014.5.2)

## 寄与分 ##

1 寄与分とは
寄与分とは,共同相続人の中に,被相続人の財産の維持又は増加に特別な貢献をした相続人がいる場合に,相続人間の公平のために,これを具体的相続分を算定する際に考慮するものです。
例を挙げますと,Aが遺言を遺さずに亡くなり,遺産が現金1000万円で相続人が子B,Cの場合,法定相続分に従って分けるとB,Cで500万円ずつ分けることになります。ところがここにBが生前にAの事業を無償で長期間にわたって助けていて,Bの助けがなければ現金にして400万円は遺産が減っていたという事情(遺産総額の4割が寄与分)が加わると500万円ずつ分けると公平とはいえません。そこでこの場合,1000万円から400万円を控除し,600万円を相続財産とみなして(みなし相続財産),これに法定相続分2分の1を乗じて,B,Cの具体的相続分300万円を算出し,Bについては寄与分があるので最終的な具体的相続分は400万円を加えて,700万円をAの遺産から受け取ることになります。
2 特別の寄与にあたるか
寄与分として相続の際に考慮の対象となるためには,被相続人と相続人の身分関係に照らし,通常期待されるような程度を越える貢献である必要があります。夫婦間の協力扶助義務,親族間の扶養義務は民法が定めており,親族内で通常行われている程度の行為は特別の寄与にはあたりません。
特別の寄与にあたる行為は,家業従事型,金銭等出資型,療養看護型,扶養型,財産管理型の5類型に整理されておりますが,実際にはそれらの複合型なども見られます。その行為がどれくらい必要な行為だったのか,無償で行われた行為といえるのか,継続して行われたのか,他の相続人と比べて特別の貢献といえるのか,親族内の義務を超えた特別の貢献といえるのか,などの観点から寄与分の有無や金額・割合が判断されることになります。
(2014.4.26)

記事を書きました。お嫁さんは夫が亡くなった後に義母との同居を拒めるでしょうか。

https://www.bengo4.com/sozoku/li_48/
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151022-90000048-bengocom-life

yahoo!の方はリンクが4ヶ月で切れるそうです。

## 赤い本 ##

交通事故事件を処理する上で必ず弁護士が参照する本に赤い本と呼ばれるものがあります。
正式名称は「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(日弁連交通事故センター東京支部)といいます。完全に法曹関係者向けで一般の本屋さんでは普通は売ってません。
この本は東京地裁の実務に基づいた賠償額の基準が記載されており,その他参考となる裁判例が多数収録されています。
交通事故の案件では弁護士はこの本に記載された基準に基づき請求額を考えていきます。
赤い本に記載された内容が絶対的な基準というわけではありません。しかし,裁判を起こした場合の事実上の基準,デファクトスタンダードとなっています。
保険会社は赤い本基準と同額まで提示してくることはまれなので,どれだけ早期解決を志向するか,裁判を起こした場合にどれくらいの増額が期待できるか,裁判で生じる負担を甘受できるか,そのようなことを考慮し,話し合いで解決するか,裁判を起こすかを決断することになります。
ちなみに青本と呼ばれる「交通事故損害額算定基準」(日弁連交通事故相談センター)という本もあります。赤い本は毎年出ますが,青い本は隔年です。メジャーなものはこの2冊ですがその他にも緑本などがあります。
(2014.4.13+)

## 弁護士会照会 ##

弁護士は,受任している事件について,各自が所属している弁護士会を通じて,役所や公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができます。弁護士法23条の2に基づく制度です。
基本的にはこの照会に対しては回答義務があると理解されています。
正当な権利を行使したいのに情報が足りない。そのようなケースでこの制度が役に立ちます。
たとえば,携帯電話の番号しか手がかりがないときにその携帯電話の契約者を回答してもらえたりします。
個人情報であり承諾がないことなどを理由として回答が拒否されることも少なくなく,常に効果的かと問われると微妙なところはあります。
その点では,更なる改善が必要ですが,正当な権利行使を支える強力な制度です。
(2014.4.6)