## 保険金請求訴訟 ##

保険契約は被保険者に保険事故が発生したことにより保険者が保険金受取人に対して保険金を支払う契約です。
身近な例に当てはめると
夫がA保険会社と生命保険契約を結び,自分が死亡したときに1000万円の死亡保険金を妻が受け取れるようにした,
このとき,A保険会社が保険者,夫が契約者かつ被保険者で,夫の死亡という事実が保険事故であり,妻が保険金受取人となります。
悲しいことですが,保険には保険金の不正取得を目的とした道徳的危険,いわゆるモラルリスクがつきまとい,訴訟となることも少なくないようです。
保険金が支払われるためには,事故が偶発性(発生と不発生が保険契約の成立時に確定していない)のものであることや事故が被保険者等の悪意や重過失に基づいて発生したものであるなどの免責事由に該当しないことが必要です。
偶発性についての立証責任は傷害保険について保険金請求者側とする平成13年の最高裁判決がありますが,一方で火災保険について保険者側に偶発性の立証責任を負わせる平成16年の最高裁判決もあり,基本的には保険金請求者は事故発生の外形的事実を示せば最低限の主張をしたことになり,悪意や重過失により事故が招来されたなどは免責事由として一般に保険者が立証責任を負担すると考えられているのかなと思います。
とはいえ両者はかなり密接な関係がありますので,立証責任のことはともかくとして,裁判になれば,当事者はそれぞれ自分たちに有利な事情を拾い集めて主張,立証していくことになります。
モラルリスク事案においてポイントとなる事情は,1:事故の客観的状況(例,ブレーキ痕がない),2:被保険者等の動機,属性等(例,金銭的に困窮していた),3:被保険者等の事故前後の言動等(例,歯医者の予約をしていた),4:保険契約に関する事情(例,家計に対して過大な保険料),の4つに大別されるようです。
(2014.3.22)