サイバー犯罪捜査入門

図解・実例からのアプローチ サイバー犯罪捜査入門(ハイテク犯罪捜査入門)―捜査応用編 (ハッカー検事シリーズ Vol. 3)

を読みました。

ハッカー検事こと大橋充直検事による著書であり

月刊誌「捜査研究」において氏が行った連載を本にまとめたものです。

読者のレベルを文系法執行関係者に想定し

難解な用語を平易に言い換えながらサイバー犯罪の捜査について

平易に解説しておられます。

このシリーズの良いところは想定している読者に対し

無茶な要求をしていないところです。

ここから先はハイテク捜査官に任せなさいと言い切ってくれます。

また,ここは必ず最低限理解しなさいとポイントを指摘します。

とはいえ氏の説明はとても上手でウィットに富んでおり

知らず知らずのうちにかなりの知識を習得することができるはずです。

そして副次的効果ですが

氏はとってもライトな語り口で記述を行っており

いわゆるネットスラングをちりばめた文体は

ネット文化の空気感になじみのないお堅い読者に

ネットでの社会常識を教えてくれます。

(コンピュータ業界ではオフィシャルな定義集に
きまじめな顔をしてジョークがはいっていることも多い。
 RFC2550はその最たるものであり現在のプラグラムが
西暦9999年以後の動作を保証していないことを
問題として取り上げているとのことである。)

つい先日もソニーのサーバーがヴァルナビリティ攻撃を受け

不正侵入を許し顧客データの流出を起こすという

世界中を揺るがす大事件がおきました。

今後もサイバー犯罪は増えることこそあれ

減ることないでしょう。

そして人間社会の重要な部分にコンピュータが入ることで

サイバー犯罪は業務妨害等にとどまらず

殺人といった粗暴犯の分野への進出も予想されるところです。

この本のシリーズは一般人にとってもさほどアレルギーを出すことなく

興味深く読むことができるものと思われます。

ネット社会での転ばぬ先の杖として,

コンピュータの可能性と限界を把握するために

みなさんに手にとって欲しいと思います。

ちなみに巻末が用語集になってますが

これが実はネタの宝庫で大橋検事のジョークもありけっこう面白いです。