## 示談 ##

犯罪の被害に遭われた方から今後について相談を受けることがあります。
犯人側から示談の申し出があったとき,どのように対処すればよいでしょうか。
そもそも肉体的,心理的に傷ついており被害を受けたことと向き合う気持ちになれないときには会うことを断るべきかもしれません。犯人の家族や弁護士にあなたを傷つける意図はないかもしれませんが,犯人を思うあまり,あるいは様々な無理解や勘違いがあり,あなたが深刻に傷つく可能性は否定できません。
なんとか向き合える。
そういうときには以下の2つのことをよく覚えておいてください。

1 示談に応じればもちろんのこと,賠償金を受領するだけで刑事処分が軽くなる可能性がある。
2 刑事処分が決まった後は示談の機会は来ないかもしれない。

どういうことかというと
最終的に刑事処分を決めるにあたってはどのような動機で,どのような犯罪をしたかがとても重要なのですが,事後的な事情,すなわち反省しているとか今後の生活の再建が見込めるとか,被害者に対してどのように行動してきたかなどといった事情も考慮されるのです。
自己の犯行の被害者に真摯に向き合い,謝罪や賠償をし,また被害者から赦しを受けたといった事情は大きいです。特に窃盗や横領などの財産犯では賠償の事実は刑罰を大幅に軽減することにつながる可能性があります。
このような事情があるので刑事処分が固まる前に加害者側は示談を急ぐのです。
反面,刑事処分が決まってしまうと刑罰を軽くするために示談する動機付けを失います。道徳的にはほめられたことではありませんが知らんぷりになる可能性があるのです。
犯人側からの積極的な働きかけがないからといって被害者には損害賠償請求する権利を失うわけではありません。しかし,加害者にその気がなければ最終的には裁判を起こす必要が出てきますし,たとえよい判決をもらっても相手が文無しであれば1円も回収できない可能性もあります。

1 示談に応じればもちろんのこと,賠償金を受領するだけで刑事処分が軽くなる可能性がある。
2 刑事処分が決まった後は示談の機会は来ないかもしれない。
(2013.10.5掲載記事を再掲)